日本では、すべての人が平等に医療サービスを受けることができるように、さまざまな制度を設けています。
訪問看護サービスを提供することができるのも、医療保険制度があるからです。
このページでは、国民皆保険制度や医療保険制度を中心に説明していきます。
国民皆保険制度が制定される前にも、いくつかの制度はありましたが、加入できる保険が任意である、負担額は一人ひとり違う、無保険の人もいるなどバラバラでした。
主な制度として、健康保険法と国民健康保険法があります。
第一次世界大戦後、戦後恐慌によって大量の失業者が生まれました。
労働環境の改善が産業を発達させるとして、健康保険法が制定されました。
保険者は、政府か独自の健康保険組合(大事業所)でした。
被保険者は、従業員数15名以上の工場・鉱山労働者で一定年収を超えない者という限定的なものでしたが、少しずつ拡大し、ほとんどの正規雇用者が被保険者になりました。
また制定時は、医療を給付する病気やけがは、仕事によるもの(業務上)か、仕事と関係ないもの(業務外)かを問いませんでした。
労働者災害補償保険法(労災保険法)の制定(1947年)後は、業務上の病気やけがは労災保険法から、業務外の病気やけがは健康保険法からそれぞれ医療を給付するよう分けられました。
健康保険法は、従業員(会社員)を対象としたので、会社勤めでない農民や漁民は対象外でした。
この農民や漁民を対象として制定されたのが、国民健康保険法です。
保険者は、市町村単位の組合制、被保険者は、その市町村の農民や漁民でしたが、組合の設立や保険の加入は任意でした。
当時の農村漁村では、医者がいない無医町村の数が増加し、医療機関の開設も都市部が中心でした。
医者がいたとしても、収入が低いため医療費が支払えない状況もありました。
この背景の中、国の体制である国民健康保険法とは別に、民間では医療利用組合の動きがありました。
医療利用組合は、医師・医療機関の確保と医療費の軽減を目標に作られました。
組合の働きは、少しずつ全国に拡大していき、最終的には農林省より農村保健運動の施設として位置づけられました。
国民皆保険制度は、「全国民が保険に加入して国民同士がお互いを支え合う」という考え方です。
日本では、1961年よりこの国民皆保険制度を導入しているので、すべての国民はいずれかの医療保険に加入しています。
つまり、すべての国民が医療費を支払ってお互いを支え合い、平等に必要な時にいつでもどこでも医療サービスを受けることができる体制が整っています。
しかも、安い医療費(自己負担額)で高い医療を受けることができるのです。
国民皆保険制度の制定後は、すべての人が平等に医療サービスを受けることができるようになり、助かる命・助けられる命が増えました。
現在、医療技術の進歩や超高齢社会によって、医療費は年々増加しています。
医療費がこのまま増加し続けると、国民皆保険制度が破綻し存続が難しくなるとも言われています。
国民皆保険制度を維持するために一番大切なことは、医療費の節約です。
健康なこころとからだ作りは、医療費の節約につながります。
つまり、国民一人ひとりが健康への意識を高めて行動することが、国民皆保険制度を維持するための大きな一歩になるのです。
すべての国民は、以下のいずれかの医療保険制度に加入しています。
75歳以上になると、全員後期高齢者医療に移行します。
医療保険は、すべての人が強制的に公的な医療保険に加入(国民皆保険)し、決められた保険料を納付します。
病気やけがをした時に必要な医療サービスを受けることができます。
民間保険は、CMなどで宣伝している民間会社の保険サービスに個人が任意で加入し、掛け金(保険料)を支払います。
病気やけがをした時に補償金などが民間会社から支払われ、受け取ることができます。
民間保険は、保険加入者本人が決めたタイミングで、いつでも契約内容の変更や更新・解除を行うことができますし、保険に加入しないという選択もできます。
生存権と社会保障制度は、医療保険制度と密接に関係しています。
医療保険は社会保険の1つであり、その社会保険は社会保障制度の1つとして位置づけられています。
生存権は、日本国憲法第25条の中で「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」と定められています。
生存権は、すべての国民が権利として持っており、その生存権を保障するために社会保障制度があります。
社会保障制度は、さまざまな理由で個人の生活が不安定になったとき、公的な仕組みを上手く利用して、安心で健康な生活を社会全体で保障する制度です。
社会保障制度には、「社会保険」「社会福祉」「公的扶助」「公衆衛生」の4種類があります。
社会保険には、「医療保険」「雇用保険」「労災保険」「介護保険」「年金保険」の5種類あり、人生で起こりうるさまざまなリスクに備えています。
いかがでしたか?
日本の医療保険制度は、すべての人が平等に医療サービスを受けることができるありがたい制度です。
しかし、医療費は無限ではありません。
制度の継続には、一人ひとりが健康を意識して生活し、増え続ける医療費を抑えることが大切になるでしょう。