フィジカルアセスメントとは、身体的な症状と徴候から情報収集し、利用者の状態を判断することをいい、視診・触診・打診・聴診を行ってアセスメントをします。
状態観察をするツールとして使用されるものが、バイタルサインとフィジカルアセスメントです。
このページでは、打診と聴診について説明していきます。
なお、他のフィジカルアセスメントについては「基本的な手技」「視診と触診」をご参照ください。
また、バイタルサインについては「体温と呼吸」「脈拍と血圧」「SPO2と意識」をご参照ください。
腹部の打診は、仰臥位のリラックスした状態で行います。
腹部の視診でも紹介しましたが、腹部の全体的な膨らみは、ガス、便、腹水、脂肪、腫瘍、胎児のいずれかが原因です。
このうち、身体の向きを変えることによって膨らみが移動するのは、腹水のみになります。
腹水の診断を行うためには、打診音の変化があるか、波動が伝わるかをみます。
腹水がある場合、身体の向きを変えると、打診音も移動し、腹水がある部分は濁音、ない部分は鼓音が聴こえます。
また、左側腹部に左の手のひらを当て、右の手のひらで右側腹部を軽くたたき、左手に波動を感じたら腹水があることが考えられます。
呼吸音の聴診は、正常なのか・異常なのかをアセスメントします。
呼吸音を聴取するときには、いくつかのルールがあります。
呼吸器に何らかのトラブルがある場合、副雑音(異常呼吸音)が聴こえます。
副雑音は、「ファイン・クラックル」「コース・クラックル」「ロンカイ」「ウィーズ」の4種類があります。
副雑音の種類 | 特徴 | 疾患 |
---|---|---|
ファイン・クラックル(細かい断続性)) | ・パリパリ細かい破裂音 ・捻髪(ねんぱつ)音:チリチリ髪をねじる音 ・吸気 ・線維化して弾力を失った肺胞が膨らむときに鳴る音 ・咳払いしても消失しない | ・間質性肺炎 ・肺気腫 ・初期の肺水腫など |
コース・クラックル(粗い断続性) | ・ブクブク低く長い音 ・水泡音 ・吸気・呼気 ・気道内を空気が通過し、水をはじくように鳴る音 ・気道内の分泌物が増加した中で気泡が破裂することで起こる | ・肺水腫 ・細菌性肺炎 ・気管支拡張症 ・慢性気管支炎 ・肺炎など |
ロンカイ(低調性連続性) | ・いびきのような音、ウーウーと低い音 ・気道狭窄によって狭くなった場所に空気が通過することによって起こる | ・痰や肺がんなどが気管や主気管支を狭めている |
ウィーズ(高調性連続性) | ・高めの笛(てき)音、ヒューヒューと口笛のような音 ・気道狭窄によってできた小さな穴を空気が通過する時に起こる ・狭窄によって乱流が起こることによって起こる | ・気管支喘息 ・肺気腫 ・気管内異物など |
副雑音ということば以外に、正常ではない呼吸音を表すことばがあります。
医療現場の中で、肺雑音やラ音ということばを聞いたことがあるのではないでしょうか。
実際に現場で使用している人もいるかもしれません。
しかし、このことばは俗語になります。
どのことばにも言えますが、専門職である看護師は、正しいことばとそうでないことばを理解して、正しいことばを使用することが求められます。
腹部の聴診は、腸蠕動音の聴取を行います。
腸蠕動音は、ガスや水様物が腸管内を通過する時になる音であり、グル音ともいわれます。
腸蠕動音の聴取は、食べたものを排泄できるかどうかを確認するために行います。
腸蠕動音を聴取するときには、いくつかのルールがあります。
上記の方法で腸蠕動音の聴取を行って、正常な「グルグル」という音ではない音が聴こえたり、音の減少や消失がある場合は、何らかのトラブルが考えられます。
音の種類 | 特徴 | 疾患 |
---|---|---|
腸蠕動音の亢進 | 腸蠕動音が絶え間なく聴こえる状態 | 下痢や腸炎の可能性 |
腸蠕動音の減少 | 腸蠕動音が1分経っても聞こえない状態 | サブイレウスの可能性 |
腸蠕動音の消失 | 腸蠕動音が5分経っても聞こえない状態 | 腸閉塞(イレウス)の可能性 |
腸蠕動音が高い | 金属音のようなキリキリした音 | 腸管の狭窄や腸閉塞の可能性 |
今回はフィジカルアセスメントの打診と聴診について紹介しました。
正しい知識を理解して、早い段階で正常・異常のアセスメントができるようにしたいですね。