訪問看護を提供するスタッフと聞いて、まず頭に浮かぶのは看護師だと思います。
実際の訪問看護ステーションには、看護師以外にもいろんな職種のスタッフが働いています。
いろんな職種のスタッフが、それぞれの専門分野から利用者をサポートしています。
また、スタッフ同士が連携を図りながら、いろんな方向から利用者をサポートしています。
どのスタッフも、医師の指示(訪問看護指示書)に基づいて、サービスを提供します。
【このページでわかること】
それでは、それぞれのスタッフの主な仕事内容について紹介していきますね。
看護師・准看護師・保健師はすべて看護職員なので、訪問看護を提供する要となる職種です。
保健師助産師看護師法に定められている「診療の補助」と「療養上の世話」が主な仕事内容になります。
利用者に必要な医療処置を行ったり、生活支援(日常生活の援助)や指導などを行い、利用者の生活をサポートします。
看護師と准看護師の普段の仕事内容に大きな違いはありませんが、准看護師は「医師と看護師の指示を受けて業務を行う」と定められています。
つまり准看護師は、自分自身の判断による業務は行えないとされています。
また、看護師は厚生労働大臣が認める国家資格ですが、准看護師は都道府県知事が認める民間資格である違いもあります。
保健師は、個人の健康相談や家庭訪問、地域や企業の健康管理や指導を行う職業です。
保健師は看護師免許の取得が必須となっているため、保健師免許(厚生労働大臣が認める国家資格)のみで働くことはできません。
訪問看護事業所で働く保健師は、個人の健康相談や地域や企業の健康管理といった一般的な保健師の仕事内容を行うではなく、必要な医療処置や看護ケアといった看護師の仕事内容を行います。
つまり、訪問看護事業所の保健師は、看護師と同じ仕事内容を行います。
保健師の資格があるからといって、保健師の仕事をしているわけではありません。
理学療法士・作業療法士・言語聴覚士の3つの職種は、厚生労働大臣が認める国家資格であり、セラピストとも呼ばれています。
セラピストは、主に病気や事故などによって身体に障がいを生じたり身体機能が低下した利用者に対して、それぞれの専門分野のリハビリテーション(リハビリ)を行います。
利用者と一緒にリハビリを行うだけでなく、訪問時間以外でも利用者自身で行える個人メニューなどの提案や指導を行います。
なお、病院・診療所では、訪問看護ではなく、訪問リハビリテーションの提供を行います。
ちなみに、病院で行うリハビリを「急性期」リハビリと呼ぶのに対し、利用者の自宅で行うリハビリは「回復期」「維持期」「終末期」リハビリと呼びます。
理学療法士は、日常生活を送る上で必要な基本的な動作能力の回復を目的として運動や体操のリハビリを行います。
基本的な動作能力とは、立つ、座る、起き上がる、歩く、寝返りを打つなどの動作です。
この基本的な動作を単独で行うリハビリと組み合わせて行うリハビリを行います。
「起き上がる」「座る」「立つ」といった単独動作のみが行えるようになっても、つながりがないため、うまくできません。
そのため、「起き上がる→座る→立つ」動作を組み合わせて一連の動作を行うことが、基本的な動作能力の回復につながります。
作業療法士は、日常生活を送る上で必要な応用的動作の回復を目的としてリハビリを行います。
具体的な応用的動作には、入浴や食事、着替えなどの身の回りの動作があります。
また、利用者が日常生活の習慣としていた花の水やりや編み物などの個別的な内容も、応用的動作に含まれます。
言語聴覚士は、言葉や嚥下(飲み込み)の障がいの回復を目的としてリハビリを行います。
具体的には、口腔マッサージやコミュニケーション、誤えん予防などを行い、機能の維持や向上を目指します。
なお、理学療法士や作業療法士よりもともとの数が少ないため、リハビリ業務を行っている訪問看護事業所に必ず所属しているとは限りません。
そのため、言語聴覚士によるリハビリを希望する場合は、あらかじめ言語聴覚士が訪問看護事業所に所属しているかどうかを確認し、希望を伝える必要があります。
助産師は、妊婦健診や分娩介助、出産後のケアや新生児指導などを行う職業です。
助産師は看護師免許の取得が必須となっているため、助産師免許(厚生労働大臣が認める国家資格)のみで働くことはできません。
小児を対象にしているため、医療保険の介入のみになります。
主に、小児に特化した訪問看護事業所に在籍しています。
疾患を持った子どもや成長・発達が気になる子どもなどへ訪問看護を行い、その子どもの家族もサポートします。
精神保健福祉士は、精神障がい者の相談援助や自立支援、日常生活や社会参加のサポートなどを行います。
精神保健福祉士は、厚生労働大臣が認める国家資格です。
精神障がい者を対象にしているため、医療保険の介入のみになります。
主に、精神科に特化した訪問看護事業所に在籍しています。
訪問看護ステーションと病院・診療所で、取り決めが違います。
医療事務は、医療機関の事務業務を行う職員です。
一般企業の事務業務との違いは、医療の専門知識が必要になることです。
医療事務の民間資格や検定はありますが、必ず資格が必要ではないため、無資格・未経験でも働くことができます。
医療事務の配置義務はありませんが、ほとんどの事業所では配置されています。
小規模の事業所や開設まもない事業所では、配置されていないこともあります。
この場合は、管理者が医療事務の仕事を担うケースが多いです。
基準はありませんが、仕事内容や量を考えると、一般的に利用者数100人に対して、医療事務1人の割合が良いとされています。
医療事務の主な仕事は、請求業務(レセプト)であり、請求に必要な書類の作成や確認を行います。
この請求を行うことで、訪問看護の利用料金、つまり報酬を得ることができます。
請求内容に不備があると請求書が戻ってきます。
また、スタッフが訪問中も事務所に常駐し、利用者や多職種との電話対応や請求書の作成、カルテ整理などの業務も行います。
利用者や家族と直接会う機会は少ないですが、スタッフを影から支える縁の下の力持ちともいえます。
いかがでしたか?
訪問看護ステーションには、いろんな職種のスタッフが在籍し、それぞれの専門分野から利用者をサポートしていることが理解できたでしょうか。
頭の中が少しでも整理されていると嬉しいです。
【いろんなスタッフの仕事内容】