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健康状態の観察

フィジカルアセスメント1(基本的な手技)

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フィジカルアセスメントとは、身体的な症状と徴候から情報収集し、利用者の状態を判断することをいい、視診・触診・打診・聴診を行ってアセスメントをします。

状態観察をするツールとして使用されるものが、バイタルサインとフィジカルアセスメントです。

このページでは、フィジカルアセスメントの基本的な手技について説明していきます。

なお、他のフィジカルアセスメントについては「視診と触診」「打診と聴診」をご参照ください。

また、バイタルサインについては「体温と呼吸」「脈拍と血圧」「SPO2と意識」をご参照ください。

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状態を判断することが目的

フィジカルアセスメントでは、身体的な症状と徴候の情報収集がポイントになります。

症状(symptom)は、S情報や主観的情報とも呼ばれ、利用者自身が体験していることをいいます。

徴候(sign)は、O情報や客観的情報とも呼ばれ、他人からも確認できる様子のことをいいます。

ここで気をつけたいことが、「状態を判断」することが目的であり、「疾患名をつける診断」は目的ではないということです。

訪問看護師がフィジカルアセスメントを行う一番の目的は、利用者の状態から緊急性の有無と必要なケアを正しく判断することです。

診断名をつける診断は医師に任せます。

フィジカルアセスメントの順番

フィジカルアセスメントの順番は、利用者への負担が少ないものから行います。

ほとんどの場合は、視診→触診→打診→聴診の順番になります。

しかし腹部の場合は、視診→聴診→打診→触診の順番になります。

腹部では、打診や強い触診による腸蠕動への影響や、触診による痛みの出現が考えられるので、順番が変わります。

また、どの場合でも、問診を一番初めに行って、情報を得ます。

視診

視診は、「目で見る」ことをいいます。

しかし、漠然と利用者を見ても、何を見ているのか・何を見るべきなのかがわかりません。

「何を見ているのか・何を見るべきなのか」の情報を整理して、観点をはっきりさせることで、利用者の状態を判断しやすくなります。

視診を行うときは、意識の状態・精神状態・活動や体動・体位などの観点をもって見ていきます。

また、全体的に見たり部分的に見たりもします。

触診

触診は、「手で触れる」ことをいいます。

手は身体の中で触覚が敏感であり、その中でも指先は特に敏感です。

触診では、触れることによって、皮膚の状態・可動性・圧痛などを認識・判断します。

また、触れる対象・目的によって手や指先など使用する部位を使いわけます。

触診は、利用者の皮膚に直接触って行います。

手が冷たいと不快感を与えてしまうので、あらかじめ手を温めておくとよいでしょう。

皮膚の状態

皮膚の状態では、皮膚表面の性状や温度などをみます。

皮膚表面の性状は、「なめらかさ(ツルツル・ザラザラ)」「浸潤(サラサラ・ベトベト)」「弾力(硬い・軟らかい)」などであり、指先を使います。

温度は、温感・冷感を手の甲で確認します。

手のひらより手の甲のほうが皮膚温が低めであるので、温度を感じやすくなっています。

可動性

可動性とは、動かすことができること、どれくらい自由自在に動くのかという程度をいいます。

「可動性が良い」とは、いろんな方向に動かしても同じように良く動くことをいいます。

例えば、リンパ節腫脹の有無を判断するときに可動性を確認します。

リンパ節腫脹が触れたとき、良性の場合は炎症の影響などが原因になります。

良性の場合は、いろんな方向に動かしても同じように良く動く「可動性が良い」という判断になります。

リンパ節腫脹が触れたとき、悪性の場合は転移性のがんの浸潤などが原因になります。

悪性の場合は、周囲に癒着して、ある方向へは動くがいろんな方向には動かない・動きがバラバラの「可動性が悪い」という判断になります。

振動

振動は、ブルブルとふるえる感じをいいます。

振動は、やわらかい部位ではなく、筋肉が薄くて骨で音を響かせることができる部位のほうが、敏感に感じやすいです。

指先などのやわらかい部位で触ると、振動を感じる前に振動を吸収してしまいます。

そのため、小指の付け根から手首にかけた場所(チョップの形)は、筋肉が薄くて骨で音を響かせることができます。

圧痛

圧痛は、触れたときにはじめて痛みが出るものをいいます。

これに対して、何もしなくても痛みがあるものを「自発痛」といいます。

感染によるリンパ節腫脹などの場合は、自発痛は少なく、リンパ節に触れてはじめて痛みを訴える(圧痛)ケースがあります。

打診

打診は、身体の表面をたたいて振動を起こし、その音を聴きます。

指などで身体の表面を直接的・間接的にたたいて振動を起こし、音(打診音)を聴き取り、身体の中の状態を推定します。

身体の中の状態とは、内臓の位置や大きさ、密度などです。

打診は、他のフィジカルアセスメントツールと比べると、使用する場面が少ないです。

打診は、以下の場面で行います。

  • 肝臓の位置・大きさの推定(スクラッチテストで代用することが多い)
  • 心臓の大きさの推定(スクラッチテストで代用することが多い)
  • 横隔膜の位置の推定
  • 腹部膨満感の原因の推定(フィジカルアセスメント2「腹部の打診」参考)

打診の方法

打診では、左右の中指を使用します。

打診は、利用者の皮膚に直接触って行います。

手が冷たいと不快感を与えてしまうので、あらかじめ手を温めておくとよいでしょう。

以下の①②を位置をずらしながら行います。

①まず、利き手でない中指の第二関節までを皮膚に密着させます(他の指は宙に浮いた状態)。

②利き手の中指は、直角に当てて手首のスナップをきかせてすばやく第一関節付近をたたき、たたいた後は、すぐに利き手の中指を離します。

打診音の種類

打診音の種類には、以下の5つに大きくわけられます。

音の表現音の性質身体の中の状態臓器
共鳴音(きょうめいおん)よく響く音空洞(外側が硬い)
鼓音(こおん)ポコポコ、ポンポン空洞(やわらかい袋状)胃、腸管
濁音(だくおん)ドンドン
ほとんど響かない
組織や水・便などが詰まっている肝臓、便で詰まっている腸管
過共鳴音(かきょうめいおん)とてもよく響く音空気がとても多く、硬いものに包まれている子どもの肺、肺気腫
平坦音(へいたんおん)ほとんど響かない組織などで詰まっている大腿や腕(ほとんど筋肉の部位)

聴診

聴診は、利用者の身体に聴診器を当てて、その音を聴き、身体の中の状態を判断します。

聴診器の使用方法

聴診では、聴診器を使用します。

聴診器は、利用者の身体に当てる「チェストピース」と看護師の耳に当てる「イヤーチップ」で構成されています。

チェストピースは、「膜型」と「ベル型」があり、手動で切り替えるタイプが多いです。

聴診器によっては、膜型のみの場合もあります。

イヤーチップは、ひらがなの「つ」の向きで入れて使用します。

正しい向きで使用しないと、音の聴取や周りの音を遮断することが難しくなります。

おすすめ商品

聴診器にはたくさんの種類があり、値段もまちまちです。

私のおすすめは、チェストピースの膜型とベル型の両方がついているもの、イヤーチップが痛くないものです。

リットマンの聴診器は、自分で部品を購入し、修理をすることができます。

チェストピースの「膜型」と「ベル型」の違い

チェストピースの膜型とベル型には、以下のような違いがあります。

ほとんどの場合は、膜型を使用します。

チェストピースの種類メリットデメリット聴取する部位
膜型・膜全体が皮膚にくっついておらず、一部分がぴたっと密着していれば聴取できる
・やせて肋骨が出ていても聴取できる
・強く押し付けても問題なく聴取できる
低い音をカットするほとんどの身体の部位
ベル型・高い音・低い音の両方とも聴取できる・皮膚との間に少しでも隙間があくと、周囲の音が入る
・強く押し付けると膜型と同じようになる
心音(心不全)

聴診の方法

聴診は、呼吸音・心音・腸蠕動音の聴取など、いろんな場面で使用できるアセスメント方法です。

聴診は、以下のポイントを押さえて行っていきます。

  • チェストピースを温めておく:チェストピースが冷たいと不快感を与えてしまうので、あらかじめ温めておく。
  • 静かな環境で行う:聴取する音が小さいので、静かな場所で行う・静かな環境を作る。
  • 集中する:あらかじめどのような音が聴こえるかを予測し、1つの音に集中して音を聴取する。
  • 音の性状を聴きとる:音の高さや低さ・大きさや小ささなどを聴取する。
  • チェストピースの膜型とベル型を使い分ける:聴取する部位によって使い分ける

まとめ

今回はフィジカルアセスメントの基本的な手技について紹介しました。

正しい知識を理解して、早い段階で正常・異常のアセスメントができるようにしたいですね。

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