フィジカルアセスメントとは、身体的な症状と徴候から情報収集し、利用者の状態を判断することをいい、視診・触診・打診・聴診を行ってアセスメントをします。
状態観察をするツールとして使用されるものが、バイタルサインとフィジカルアセスメントです。
このページでは、視診と触診について説明していきます。
なお、他のフィジカルアセスメントについては「基本的な手技」「打診と聴診」をご参照ください。
また、バイタルサインについては「体温と呼吸」「脈拍と血圧」「SPO2と意識」をご参照ください。
「チアノーゼ」と「ばち状指」の視診
チアノーゼとばち状指は、酸素の供給不足を示す指標、つまり身体の末梢まで酸素が十分に運ばれているのかを評価する指標です。
チアノーゼは、現在の酸素の供給不足を示し、ばち状指は、数週間・数か月間の慢性の酸素の供給不足を示します。
チアノーゼ
チアノーゼは、指先や唇が紫色に変化したことをいいます。
血液に含まれる酸素の量が少なくなると、血液の色が鮮やかな赤色から暗い赤色(暗赤色)に変化し、皮膚を通すと紫色にみえます。
血液中に含まれる酸素、主にヘモグロビンによって運搬されます。
チアノーゼは、酸素と結合していない還元ヘモグロビンが5g/dL以上となったときに出現します。
ばち状指
ばち状指は、爪の付け根が盛り上がって、160度程度が正常値のところ、180度以上の角度になったことをいいます。
ばち状指の確認方法は、左右の人差し指と第一関節同士を背中合わせにして、親指と人差し指で「∞」の形を作ります。
左右の人差し指の爪の間に「◇ひし形」の隙間が空いていれば正常、隙間がなければばち状指の判断になります。
慢性的に酸素供給不足によって、指や爪の付け根に浮腫(むくみ)が出現するので、隙間がなくなり、ばち状指になります。
呼吸と胸郭の視診
呼吸状態を観察するときは、呼吸と胸郭の状態を確認します。
呼吸
呼吸の観察では、楽そうな呼吸か、規則的なリズムか、正常な呼吸数か、胸郭の動きが左右対称かなどを確認します。
努力呼吸(肩呼吸や鼻翼呼吸など)、不規則なリズム、呼吸数が少ない・多い、胸郭の動きが左右非対称の場合は、換気不全や呼吸不全など何らかの異常が疑われます。
胸郭
胸郭の観察では、左右対称か、前後径と横径が1:1.5~2であるかなどを確認します。
胸郭が左右非対称、前後径と横径が1:1の場合は、何らかの異常が疑われます。
腹部の視診
腹部の観察は、表面の動き、輪郭、皮膚の状態を確認します。
以下にそれぞれの観察ポイントを挙げていきます。
表面の動きの観察ポイント
- 胃腸の蠕動運動
- 腹部大動脈の拍動
輪郭の観察ポイント
- 全体的な膨らみ:ガス、便、腹水、脂肪、腫瘍、胎児
- 全体的な凹み:立位で下腹部が膨らむ場合は栄養失調によるやせ
- 部分的な膨らみ:腹壁ヘルニア、脂肪腫など
- 上腹部の膨らみ:大動脈瘤、胃や膵臓の腫瘤など
- 下腹部の膨らみ:膀胱や支給の増大、卵巣・盲腸・S状結腸の腫瘤など
皮膚の観察ポイント
- 皮膚の色や色素沈着:黄疸(肝硬変)など
- 瘢痕:手術や外傷、やけどなど
- 線条(皮膚表面のすじ):白色は妊娠や肥満、赤色はステロイドによる腹部膨隆など
- 静脈の怒張(血管の部分的な隆起):門脈閉塞、大静脈閉塞など
胸部の触診
胸部の触診は、座位または仰臥位で行い、胸郭の皮膚と皮下の状態、気管の偏位の状態を確認します。
胸郭の皮膚と皮下の状態(皮下気腫ひかきしゅ)
胸郭の皮膚と皮下の状態は、胸郭全体を触って、皮膚の緊張、痛みや圧痛、皮下気腫などを確認します。
皮下気腫は、皮膚を押すと皮下でプチプチを弾ける感覚があり、主に気胸や縦隔気腫などでみられます。
皮下気腫がみられた場合は、経時的に観察するためにも、どこでみられるのかをマジックなどでマーキングするとよいでしょう。
気管の偏位(かたより)
気管の偏位の状態は、鎖骨の上縁と胸鎖乳突筋の内部で縁取れる空間(気管)を、人差し指と中指で左右に動かします。
まっすぐではなく、左右どちらかにかたよりがある場合、気管の偏位がある状態になります。
気管は患側の反対側にかたむくので、右側に緊張性気胸がある場合、気管は左側にかたよります。
腹部の触診
腹部の触診は、仰臥位で行います。
温めた指の腹を使って、1㎝程度の浅く軽い力で腹部全体を押さえます。
腹部の触診によって、腹部の硬さ・やわらかさ、圧痛やおおきな腫瘤・皮膚表面に近い腫瘤、便の有無などを確認します。
まとめ
今回はフィジカルアセスメントの視診と触診について紹介しました。
正しい知識を理解して、早い段階で正常・異常のアセスメントができるようにしたいですね。
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