利用者が訪問看護の利用を開始するとき、訪問看護ステーションが利用者に訪問看護を提供するときには、契約を交わす必要があります。
その契約に必要な書類が、今回紹介する契約書と重要事項説明書になります。
「契約書はわかるけど、重要事項説明書ってなに?」
「契約書だけじゃだめなの?」
と思う方もいらっしゃるかと思います。
私が訪問看護ステーションに転職した当時も、同じように思っていました。
実際に契約するのは、ステーションの管理者であることが多いです。
つまり、スタッフ個人が契約の場に同席する機会は少なく、管理者に一任されているステーションが多いです。
このページは、訪問看護ステーションの新任管理者の方、スタッフの方、訪問看護に興味のある方など、いろんな方に参考にしていただけると思います。
【このページでわかること】
- 契約書と重要事項説明書は両方とも必要
- 契約時は家族の同席が理想的
- テンプレートやひな形のコピペは危険
- 契約書の内容
- 重要事項説明書の内容
それでは、具体的に紹介していきますね。
契約書と重要事項説明書は両方とも必要
契約書と重要事項説明書の違いはなんでしょうか。
- 契約書:訪問看護サービスの契約を証明する文書
- 重要事項説明書:契約書の内容について具体的な内容を説明する文書
となっています。
つまり、「訪問看護ステーションは、重要事項説明書の内容に沿って、利用者に説明し、契約書にサインして契約する」という形です。
- 契約書と重要事項説明書はそれぞれサインが必要
- 2部作成し、訪問看護ステーションと利用者が1部ずつ保管
- 説明日=契約締結日として、年月日を記載
- 誰にでもわかることばで文章を書く
利用者自身で同意やサインが難しい場合は、家族などが代筆することもあります。
万が一裁判になった場合、業界用語などを多く使用している契約書では、裁判官の理解を得ることができません。
裁判官がわかることばでないと、契約書で使用している用語の意味についても争うおそれがあるので注意が必要です。
契約時は家族の同席が理想的
契約や重要事項説明書の説明をする時は、利用者だけでなく、家族やキーパーソンが同席し、なるべく一緒に説明を受けてもらうとよいでしょう。
【利用者が1人で説明を受けるリスク】
- 利用者の理解力の低下や認知機能の低下がある場合、わかったような素振りをされる可能性がある
- 契約後に家族やキーパーソンが再び説明を希望する、契約内容に納得できないトラブルが起こる可能性がある
トラブルを避けるためにも、契約時に家族やキーパーソンが同席できるようにスケジュール調整を行います。
テンプレートやひな形のそのまんまコピペは危険
契約書や重要事項説明書は、主に管理者が作成する書類ですが、実際に書類の作成経験がある人は少ないかと思います。
一から自分自身で内容を調べたり考えたりすることは大変です。
そこで助けとなるのが、インターネットなどで多く公開されているテンプレートやひな形です。
テンプレートやひな形は、無料公開されていることが多いこともあり、使用しやすいツールです。
しかし、そのテンプレートやひな形をそのまま複写して使用すると、さまざまなトラブルが起こるリスクもあります。
【トラブル例】
- 守れない契約内容をそのまま入れてしまっている
- 実際のサービス内容と違うことが書いてあるなど
このように、内容確認ができていないと利用者から契約違反と指摘され、トラブルにつながることがあります。
トラブル回避のためにも、テンプレートやひな形はそのまま複写するのではなく、あくまでも参考程度・確認程度とします。
テンプレートやひな形を上手く利用し、それぞれのステーション色の契約書と重要事項説明書を作りましょう。
契約書の内容
契約書は、訪問看護の契約を証明する文書です。
【契約書に入れる内容】
- 契約条項
- 損害賠償
- 契約終了
- 解約
- 権利義務の譲渡禁止
- 反社会的勢力の排除(反社条項)
- 協議条項
- 合意管轄
契約条項
- 利用者の権利と義務
- 事業所(訪問看護ステーション)の権利と義務
損害賠償
- 契約に違反し、相手に損害を与えた場合、違反した当事者は損害を受けた相手に対してその損害を賠償する
- 訪問看護の提供中に事故が発生し、利用者や家族に損害が発生した場合
- 利用者や家族に重大な過失がある場合
契約終了
- 利用者理由の場合
- 事業所理由の場合
解約
- 利用者の解約権
- 事業所の解約権
権利義務の譲渡禁止
- 契約で発生する権利や義務は、相手の承諾なく第三者に譲渡することを禁止
- 譲渡する場合は、事前に書面による承諾が必要
反社会的勢力の排除(反社条項)
- 利用者と事業所がお互いに反社会的勢力でないことを確認
協議条項
- 利用者は、訪問看護提供中など、可能な限り事業所に協力する必要がある
- 契約書に記載のないことなどを話し合いで決める
合意管轄
- 契約中に利用者と事業所との間でトラブルが発生し、訴訟する(裁判による解決をする)場合、どこの裁判所で裁判を行うかをあらかじめ合意で決める
- 利用者と事業所は、利用者の住所を管轄する裁判所を第一管轄裁判所とする
重要事項説明書の内容
重要事項説明書は、契約書の内容について具体的な内容を説明する文書です。
【重要事項説明書に入れる内容】
- 訪問看護を提供する事業所の概要
- 事業の目的や方針
- スタッフについて
- サービス内容
- 利用料金
- 緊急時の対応
- 災害時の対応
- 相談・苦情
- 秘密保持
訪問看護を提供する事業所の概要
- 訪問看護事業所を運営する法人名や代表者
- 訪問看護を提供する事業所名
- 管理者名
- 所在地(住所や電話番号)
事業の目的や方針
- 訪問看護を行う事業の目的や理念
- 訪問看護の基本方針
スタッフについて
- スタッフ体制
- スタッフの交替
サービス内容
- 訪問看護として提供する基本内容
- 訪問看護の記録
- 訪問看護計画書の作成や変更
- 訪問看護の提供時間
利用料金
- 訪問看護の利用料金
- 利用者都合の場合のキャンセル料
- 利用者の自己負担額
- 利用料金の請求や支払い方法
- 利用料金の変更
- 利用料金の滞納
緊急時の対応
- 利用者の病状が急変した場合
- 重大な事故が起こった場合
- 訪問看護の提供中やその他の時間も含めて対応
災害時の対応
- 災害時に備えた準備
- 災害の規模によっては、訪問看護が提供できない場合もある
相談・苦情
- 相談や苦情などに対応する窓口を設置
- 利用者の要望や苦情などに対して、迅速に対応
秘密保持
- 訪問看護の提供で知った利用者や家族の個人情報を外部に漏らさない
- 契約終了後も守秘義務を継続
まとめ
いかがでしたか?
契約書と重要事項説明書の内容や違いについては理解できたでしょうか。
訪問看護の提供を始めるときも終わるときも契約が必要です。
訪問看護ステーションと利用者は、契約書と重要事項説明書をそれぞれ一部ずつ保管し、それぞれが確認できるようにしておくことが重要です。
【訪問看護の契約書と重要事項説明書まとめ】
- 契約書と重要事項説明書は両方とも必要
- 契約時は家族の同席が理想的
- テンプレートやひな形のコピペは危険
- 契約書の内容
- 重要事項説明書の内容
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